/home: さわひらき

Overview

「自分には帰る場所があると思っていた。」

オオタファインアーツでは7年ぶりとなるさわひらきの個展『/home』を開催します。さわは、ロンドン大学スレード校在学中の2002年に小さな玩具の飛行機が室内を飛び交う幻想的な映像作品《dwelling》で一躍脚光を浴び、その後もロンドンを拠点にアーティストとして確固たるキャリアを築いてきました。

本展タイトルの由来となった映像作品《/home》は、デビューから15年が経った2017年に、両親の転居を機に家具が全て取り払われたさわのかつての実家で撮影されました。自分の育った場所がなくなる、それはさわが多感な高校時代までを過ごし、その後海外を拠点に活躍するようになってからも心のよりどころであった「家(home)」の喪失を意味しました。

壁紙のシミ、家具の跡。かつての生活の面影が色濃く残る空間を映した《/home》は、誰にでもある私的な場所やそこで過ごした時間を想像させます。また、その空間に15年前と同じ小さな飛行機を飛ばすさわの行為は、作家としての経歴を華々しくスタートさせる契機となった《dwelling》でのそれとは違い、時間や場所、またそこから生ずる記憶や意識といった、デビュー以来の一貫したテーマに向き合い続ける作家の凛とした意思表明のようにも感じられます。

「自分には帰る場所があると思っていた。」そう語るさわは、実家の喪失という経験をきっかけに、自身を近代に始まったニュータウン的幻想の中で生まれ育ったと位置づけるようになりました。本展では、かつて社会が抱いた「家」に対する希望や幻想の象徴であったニュータウンに着目した新作の平面作品も発表します。個人や社会の夢が詰まった「家」の形はひとつの時代を終えたと言えるでしょう。しかし、その先に始まっている新しい世界の光を感じることができる展覧会です。

Works
Installation Views