草間彌生(Yayoi Kusama)は、絵画、彫刻、インスタレーション、映像、パフォーマンス、小説など、多岐にわたるメディアを駆使しながら、「自己消滅(self-obliteration)」という芸術的信条を一貫して探求してきた、日本を代表する前衛芸術家です。
幼少期より幻視や幻聴を経験し、それらを網目模様や水玉といった反復的モチーフとして作品化するようになります。1957年に渡米後、ニューヨークのアートシーンで活動を本格化。初期のネット・ペインティング(Infinity Net)や、布製の突起物で家具や衣類を覆うソフト・スカルプチュアを皮切りに、鏡や電飾を駆使した没入型インスタレーション、裸体によるストリート・ハプニングなど、形式を越えた表現を次々に展開。60年代のポップアート、ミニマルアートといった文脈とも交錯しながら、草間は自らの身体性と内面世界を起点とする特異な実践を確立していきます。
帰国後も創作は止まることなく、特に2009年に開始した絵画シリーズ《わが永遠の魂(My Eternal Soul)》では、12年の間に800点以上の作品を制作。鮮やかな色彩と象徴的モチーフを用いながら、自身の心象世界と宇宙的イメージを融合させるような絵画空間を築き上げました。2021年からは《毎日愛について祈っている(Every Day I Pray for Love)》と題した新シリーズに着手するなど、キャリア80年を超えてなお精力的な制作活動を続けています。
草間の作品には、没入感、内面と外界の境界の消失、存在の拡張といった体験的側面が顕著です。彼女のインスタレーション作品、特に《Infinity Mirror Room》シリーズは、世界各地の美術館で長蛇の列を生み出すほど圧倒的な支持を集めており、その詩的かつ執拗な世界観は、現代における「見ること」「在ること」の根源を問いかけています。
略歴
1929年 長野県松本市生まれ
1957年 単身渡米、翌年ニューヨークで活動開始
1973年 帰国後、東京を拠点に制作を継続
2016年 文化勲章受章
現在 東京在住
主な個展
2025年 「Yayoi Kusama: Retrospective」 バイエラー財団(バーゼル)*巡回予定:ルートヴィヒ美術館(ケルン)、ステデリック美術館(アムステルダム)
2024年 「Yayoi Kusama: Infinite Love」 サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)
2023年 「Yayoi Kusama – You, Me and the Balloons」 Aviva Studio(マンチェスター)
2022年 「Yayoi Kusama: 1945 to Now」 M+(香港)*巡回:グッゲンハイム美術館ビルバオ、セラルヴェス財団(ポルト)
2022年 「Yayoi Kusama: My Soul Blooms Forever」 カタール・ミュージアム(ドーハ)
2021年 「KUSAMA: Cosmic Nature」 ニューヨーク植物園
2021年 「Yayoi Kusama」 グロピウス・バウ(ベルリン)*巡回:テルアビブ美術館
2017年 「Infinity Mirrors」 ハーシュホーン博物館と彫刻の庭(ワシントンDC) *巡回:シアトル美術館、ザ・ブロード(ロサンゼルス)、トロント美術館、クリーブランド美術館、ハイ美術館(アトランタ)
2017年 「Yayoi Kusama: Life Is the Heart of the Rainbow」 ナショナル・ギャラリー・シンガポール *巡回:クイーンズランド州立美術館(ブリスベン)、Museum MACAN(ジャカルタ)
2017年 「草間彌生 わが永遠の魂」 国立新美術館(東京)
2015年 「Yayoi Kusama」 ルイジアナ近代美術館(デンマーク)*巡回:ヘニー・オンスタッド・アートセンター(オスロ)、ストックホルム近代美術館、ヘルシンキ市立美術館
2011年 「Yayoi Kusama」 ソフィア王妃芸術センター(マドリード)*巡回:ポンピドゥー・センター(パリ)、テート・モダン(ロンドン)、ホイットニー美術館(ニューヨーク)
1998年 「Love Forever: Yayoi Kusama, 1958–1968」 ロサンゼルス・カウンティ美術館、ニューヨーク近代美術館、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)、東京都現代美術館
1993年 第45回ヴェネツィア・ビエンナーレ 日本館代表(ヴェネツィア)
1989年 「Yayoi Kusama」 オックスフォード現代美術館(オックスフォード)/Center for International Contemporary Arts(ニューヨーク)
1952年 草間彌生 初個展(日本、松本)
主な所蔵先
M+(香港)
Museum MACAN(ジャカルタ)
グッゲンハイム・アブダビ
グッゲンハイム・ビルバオ
テート(ロンドン)
ポンピドゥーセンター(パリ)
ルイジアナ近代美術館(デンマーク)
ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク)
ナショナルギャラリー(ワシントンDC)
東京都現代美術館
他多数
-
草間彌生「クサマズ・クサマ」
草間彌生 1997年7月8日 - 8月7日 Tokyo「クサマ」の名はいま、ホットな話題の中心にある。 全米の批評家たちの絶賛を浴びた昨年のポーラ・クーパー、ロバート・ミラー画廊での個展以来語られてきた「クサマ・リバイバル」は、60年代の美術に関する根源的な見直しをせまるほどの深みと広がりを持...Read more -
人物展
草間彌生、嶋田美子、木村忠太、ポール・デルボー、村上隆、イサム・ノグチ、デニス・オッペンハイム、ボニーリックラック、赤塚祐二、丸山直文、森村泰昌、三木富雄、イミ・クネーベル、片瀬和夫、小沢剛、平川典俊 1996年11月7日 - 11月22日 TokyoRead more -
草間彌生の絵画
草間彌生 1996年5月23日 - 6月15日 TokyoRead more -
版画展
草間彌生、嶋田美子、大竹伸朗、加納光於、赤塚祐二、イケムラレイコ、シグマー・ポルケ、イミ・クネーベル、フランチェスコ・クレメンテ、ヨーゼフ・ボイス、アド・ラインハート 1995年11月21日 - 12月20日 TokyoRead more -
写真展
草間彌生、クリスチャンボルタルスキー、三木富雄、森村泰昌、小山穂太郎、片瀬和夫、バーバラ・エス、折元立身 1995年9月5日 - 9月30日 TokyoRead more -
草間彌生「自殺した私」 -1950年代から現在までのペーパー・ワーク60点-
草間彌生 1995年7月1日 - 8月5日 Tokyoすみれ強迫 ある日 突然 わたしの声は すみれの声になっているの 心しずめて 息をつめて ほんとうなのね みんな 今日に おこったことたちは テーブル掛けのすみれは抜け出し 這いあがって わたしの体に 一つ一つ へばりついては バイオレット...Read more -
常設展
クリスチャン・ボルタルスキー、ソル・ルウィット、草間彌生、片瀬和夫 1995年5月17日 - 6月24日 TokyoRead more
-
「ART021 Shanghai Contemporary Art Fair 2016」 11月10日(木)-13日(日) ブース:W20
2016年10月29日オオタファインアーツは、2016年11月10日から13日まで上海で行われる「ART021 Shanghai Contemporary Art Fair 2016」に参加いたします。 出展作家:南隆雄、...Read more -
「WEST BUND ART & DESIGN 2016」 11月8日(火)-13日(日) ブース:A1
2016年10月26日オオタファインアーツは11月8日から13日まで上海で行われる「WEST BUND ART & DESIGN 2016」に参加いたします。このフェアは著名アーティスト周鉄海(Zhou Tieha...Read more -
「Bazaar Art Jakarta 2016」出展 8月25日(木)-28日(日) ブース:B6
2016年8月6日オオタファインアーツは、2016年8月25日から28日までジャカルタで行われる「Bazaar Art Jakarta 2016」に参加いたします。 出展作家:半田真規、樫木知子、草間彌生、見附正康、竹...Read more -
「Art Basel Hong Kong 2016」出展 3月24日(木)-26日(土) ブース:3D12
2016年3月18日オオタファインアーツは、2016年3月24日から26日まで香港で行われる「Art Basel Hong Kong 2016」に参加いたします。 出展作家:アイ・チョー・クリスティン、チェン・ウェイ、半...Read more

