狂乱の器: マナット・ガンドトラ

Overview

オープニングパーティー: 8月23日(土)17:00より

オオタファインアーツは、イギリス在住のマナット・ガンドトラ(2001年インド・ニューデリー生まれ)の個展を開催いたします。ガンドトラは、2024年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)で美術修士(絵画)を取得した新進のペインターです。

 

ダイナミックな線、色、形によってエネルギーを放つガンドトラの作品は、ジャズや「無調性(atonality)」の概念への関心から生み出されます。無調音楽とは調的な音のヒエラルキーを否定した音楽で、そのなかでは和音も進行のなかで偶発的に現れます。インド細密画の一種、伝統音楽の旋律や音色を描き出す楽曲絵「ラーガマーラ(Ragamala)」も、彼女に影響をあたえたもののひとつです。音に宿る感情を視覚化するラーガマーラが、音楽と絵画との融合というガンドトラの制作の根源を育んだことは想像に難くありません。音楽に見られる構造の自由さ、そして感情の発露は、ガンドトラにとって絵画の制作に欠かせない要素です。彼女の描く線には直線や曲線もあれば、途切れ途切れのものもあります。予期せぬ組み合わせの色が隣り合い、要素が衝突し合いながらも、不協和音の中でそれらは感情豊かに共存しています。

 

描いていると、色彩は光を発しているように見え、
形は滑る船や沈む凧のようになる。
いくつかの絵には、リズムがぶつかり合う野性的な庭が広がり、
自然が構図を壊し、秩序を組み替え、調和をかき乱している。
無調性、シンコペーション、不協和音——
私には、世界がそう見える。
異なる言語、感覚、音が、絵の具の中で衝突し、混ざり合う。
失われ、再び見出されるという循環。

 

そう語るガンドトラは、今展覧会のタイトルを「Containers of Madness(狂乱の器)」と名付けました。キャンバスという枠のなかに閉じ込められた視覚要素たちは、常にその境界を越えようとし、互いに衝突したり押し返したりしながらも、不安定な調和を維持しています。


感情的な思考を精神的なものに発展させたガンドトラの作品は、世界の政治・社会・文化状況が複雑化する中、主題や物語といった具象的トピックに依らない新しい抽象絵画の文脈を体現するものと言えるでしょう。

 

Artwork image: Mannat Gandotra, Dwelling Places for Brazen Fruit, 2025, Acrylic on canvas, 170 x 200cm

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