奨励賞「九谷赤絵の制作 見附正康(みつけ まさやす)」

ポーラ伝統文化振興財団, 26 May 2020

第39回 伝統文化ポーラ賞 奨励賞 伝統工芸 受賞者紹介動画 リズム感ある微細文様が異次元の世界へと誘う、見附正康氏の「赤絵細描(あかえさいびょう)」の作品。細い面相筆を用いて、白磁に上絵の具(紅殻)で絵付けする、「九谷赤絵」と呼ばれる伝統技法である。白の磁肌に赤が映え、明治から昭和初期にかけて九谷焼の代名詞になるほど流行した。従来は吉祥文様や花鳥風月、中国の古典柄が多かったが、見附氏はその技法を受け継ぎながらも、現代的な感覚を取り入れて赤絵細描のイメージを一変させた。 例えば茶碗・大皿・蓋物などの白磁に、モスクのドーム天井やアラベスクを思わせる華麗な幾何学文様を展開し、見たこともない空間を創出させる。色彩は艶を抑えた赤の細線に青や金がアクセントとして施され、モダンな表情を帯びた器は独特の品格を漂わせる。 昭和50年、見附氏は石川県加賀市のサラリーマン家庭に生まれるが、もともと絵や書道が好きで、こどもの頃から続けてきた書道で鍛えた筆遣いには自信があった。ものづくりの素質を見抜いていた父の勧めもあり、高校卒業後に石川県立九谷焼技術研修所へ進む。研修所で九谷焼の基礎的な技法を学ぶ中で、途絶えていた赤絵細描を復興させた第一人者である福島武山に出会う。見附氏は赤絵細描に魅了され、平成9年の卒業後も外弟子として福島武山に10年間師事し、超絶的な技巧を習得した。 平成18年の伝統工芸士認定を機に独立。国内外の展示会などに参加し、平成22年には第1回金沢・世界工芸トリエンナーレ展(金沢21世紀美術館)に出品。平成26年には日本スイス国交樹立150周年記念の一環として行われた日本現代美術展に出品して、スイス、ポーランド、ドイツを巡回した。また、同年に三重県で開催された第9回パラミタ陶芸大賞展では大賞を受賞している。 九谷赤絵の伝統的な技法を用いながらも、独特な空間を演出して生み出す若々しい作風は、未来につながる新たな赤絵作品として期待される。

 

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