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「自己決定とは『このことを決めるのはお前ではない』という意思表明である」

『呻きから始まる』栗田隆子 新教出版社 2022年

* 会期を1週間延長しました。

 

【トーク】*Youtubeでアーカイブ映像をご覧いただけます。
「アートと社会」  嶋田美子×山本浩貴(文化研究者)
 4月15日 [土] 16:00-17:30 @オオタファインアーツ *終了
「フェミニズムの現在と未来」  嶋田美子×清水晶子(東京大学大学院教授)
 5月20日 [土] 16:00-17:30 @オオタファインアーツ *終了

 

【嶋田美子新刊 2023年4月25日発売!】

『おまえが決めるな!東大で留学生が学ぶ《反=道徳》フェミニズム講義』 白順社

 

オオタファインアーツでは、嶋田美子の実に21年ぶりとなる新作個展『おまえが決めるな!』を開催します。1980年代後半から女性と戦争をテーマに作品を制作し、日本のみならず海外でも活躍してきた嶋田は、長らく日本のフェミニズムアートの急先鋒を担ってきました。2015年にイギリスのキングストン大学で美術史博士号を取得してからは、松澤宥や美学校など、1960年代の日本における前衛芸術の研究者としても知られています。

 

今展で嶋田は、1972年に設立された「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」をフィーチャーします。中ピ連は、代表の榎美沙子を中心に♀印のついたピンク色のヘルメットをかぶって過激に華やかに活動し、当時週刊誌やバラエティ番組といったメディアに盛んに取り上げられました。そのマスコミを利用し利用されたイメージから現在でも“色物”扱いされ、フェミニズムの中ですら全く評価されていません。しかし嶋田は、性と生殖に関する女性の「自己決定権」を明確に主張した中ピ連の活動を、今こそ見直すべきではないかと訴えます。

 

「Sexual and Reproductive Rights(性と生殖に関する権利)」は自分のことを自分で決められるという個人の人権で、それを保障すべきという考えは、「SDGs(持続可能な開発目標)」のひとつ「ジェンダー平等」の達成目標として世界的に認知されています。しかし日本では、たとえDVによる望まぬ妊娠だとしても中絶には配偶者の同意を必要とすることが法で定められ、中絶手術には保険が適用されず、ようやく薬事承認されようかという経口中絶薬は手術と同等の10万円前後の価格が見込まれると言います。女性の健康や人権はいまだ国や権威のコントロール下にあるのです。

 

嶋田は、半世紀も前にそのことにはっきりと異を唱えた中ピ連を予言者に見立て、父権的権力から主体的に権利を勝ち取るべく行動したそのスピリットを復活させることを試みます。今展では、その決意表明を具現化した写真作品、ペインティング、映像作品を展示します。権利は誰かに与えてもらうものではありません。ましてや自分のことを決める権利を誰かが「与えてやろう」とするならば、毅然と宣言すべきです。「わたしのことをおまえが決めるな!」と。

 

 

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