ソー・ユ・ノウェ、樫木知子: ソー・ユ・ノウェ | 樫木知子

Overview

オオタファインアーツは、ソー・ユ・ノウェ樫木知子による二人展を開催いたします。異なる文化的背景を持つ二人の女性作家は、それぞれ独自の方法で「身体」と「精神」という主題にアプローチしながらも、本展において静かに共鳴しています。

 

ミャンマー出身の彫刻家ソー・ユ・ノウェ(1989年生まれ)は、ミャンマーの民間伝承、民俗芸術、仏教やアニミズム的な実践からインスピレーションを得ています。彼女の作品には、断片化された女性の身体がどこか内臓的で植物的な形態へと変容する様が繰り返し登場します。ノウェ自身が中国系のルーツも持つのと同様に、異なるものを組み合わせることで、アイデンティティの多層性や流動性を表現しています。自己 / 再生 / 女性といった属性の比喩としての「蛇の女神」という神話的モチーフを好んで用い、その女性像は仏教教義における保守的な女性の役割に挑戦するものとなっています。本展でのもう一つの重要なモチーフ、観音(観世音菩薩)の頭部は、通常ミャンマーでは美しい女性として表象される観音像が三十三間堂では男性として表されることに触発され、神話的存在を通じたジェンダー・アイデンティティへの問いを新たなシリーズへと発展させたものです。

 

樫木知子(1982年生まれ)は、日本画を想起させる流麗な描線と透明感あふれる色彩による絵画表現を用いて、身体を描き続けています。新作《私を探す》は、人が水面に吸い込まれていくような印象を与える一方、水面下の世界と引っ張り合っているようにも見え、異界とつながる不思議な情景を鑑賞者の前に繰り広げます。また、樫木が「天国みたいなもの」と称する、子どもの頃に公園で摘んだという野花が幾重にも丁寧に描き込まれ、オタマジャクシが風に逆らう様は浄土を思わせます。描画と研磨を繰り返すことで得られる滑らかで多層的な画面の白昼夢のような世界に引き込まれるようです。

 

両者の作品に登場する人物像は、文化的かつ神話的な美と結びつきながら、私たちの世界の見方を改めて問い直す可能性を開いています。本展が、彼女たちの眼差しを通して、美とは何かという根源的なかたちを見つめ直すきっかけとなれば幸いです。