樫木知子の描く人物像は、時に断片化し、部屋、あるいは庭といった、限られた空間に配置され、人とにじみ出る存在感を絵画表面に閉じ込めています。
平滑なテクスチュアと流麗な描線は、一見日本画と見まがうほどですが、作品は全てアクリルで描かれ、描いた画布の上をサンダーで削り、再び描くというプロセスを経て、滑らかな絵画表面と幾重にも重なる色層の背景を獲得しています。平安仏画や松園などの近代美人画をも彷彿とさせる画風は、京都に生まれ学んだことによるのかもしれません。
「絵の始まりは自分のイメージで、ゴールはそれにどれだけ近づくかということ」と作家が言うように、蓄積した光景をつむぎ、発酵させ、ゴールに近づくために描いては消し、進行中の画面とゴールを照らしあわせ、印象を調整するモチィーフや表情を幾度も加減することで、折り重なるレイヤーを持つ絵画を形作ります。フラットに磨かれた画面は、時間や手の痕跡を消すことを志向して作られますが、それは、描かれたものはそもそも物語を持つものではなく、ただ頭の中にあるものであって、そこに時間は存在しないと考えるからです。日常の光景は、ゴールに近づくにつれ変貌をとげ、さながら白昼夢のように鮮烈な印象を残す絵画となります。
樫木知子は、1982年京都生まれ。京都市立芸術大学美術研究科の修士号、博士号の両方を取得し卒業。近年の展覧会に「アペルト05 樫木知子 ~Daydream~」金沢21世紀美術館(2016年)、「高橋コレクション展:ミラー・ニューロン」東京オペラシティアートギャラリー(2015年)、「the 7th Asia Pacific Triennale of Contemporary Art」Queensland Art Gallery、ブリスベン(2012年)、「ヨコハマトリエンナーレ」横浜(2011年)、「Bye Bye Kitty!!!」Japan Society Gallery、ニューヨーク(2011年)など。さらに、the Museum of Old and New Art(タスマニア、オーストラリア)、Queensland Art Gallery(ブリスベン、オーストラリア)、そしてトヨタアートコレクションをはじめとする公私コレクションに収蔵されています。
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Tomoko KashikiVacation, 2006Acrylic, paper, cotton, wooden panel181x227cm
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Tomoko KashikiFlower Sun and the Moon Reflected, 2013Acrylic, linen, wooden panel145 x 112 cm
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Tomoko KashikiFermata, 2017Pencil, coloured pencil, paper25.4 × 21.8 cm
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Tomoko KashikiAzaleas, 2017Pencil, coloured pencil, paper21 x 29.7 cm
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Tomoko KashikiThe Hanged Man, 2019Acrylic, silica sand, linen, wooden panel180 x 79 cm
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Tomoko KashikiStuffed Toys and floral pillow, 2019Acrylic, linen, wooden panel122 x 190 cm
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Tomoko KashikiSoup of Memories Served with Smiling Sunflowers and Bones, 2020Acrylic, linen, wooden panel181.8 x 227 cm
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Tomoko KashikiMoon and Earphone, 2020Acrylic, wall paper on wooden panel250 x 182 cm
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Body
Tomoko Kashiki, Zai Kuning and Tang Dixin 2023年3月18日 - 5月6日 SingaporeOta Fine Arts Singapore is delighted to present “Body”, a group exhibition by Tomoko Kashiki, Zai Kuning and Tang Dixin. This exhibition looks at the ways in which these three...Read more -
Traces
Tomoko Kashiki, Genevieve Leong, and Guo-Liang Tan 2022年9月16日 - 10月23日 SingaporeOta Fine Arts Singapore is delighted to present 'Traces', a group exhibition featuring three artists: Tomoko Kashiki, Genevieve Leong, and Guo-Liang Tan. The works presented here suggest the presence of...Read more -
Flame
アキラ・ザ・ハスラ―、樫木知子、ザイ・クーニン、ザン・エンリ、嶋田美子、竹川宣彰、チョン・ユギョン、ナムジュンパイク、久門剛史、リウ・チュアン 2022年2月22日 - 3月26日 Tokyo -
islands
アキラ・ザ・ハスラー、竹川宣彰、タン・ディシン、半田真規、さわひらき、樫木知子、照屋勇賢 2021年1月9日 - 2月13日 Tokyoオオタファインアーツでは、ドローイング等の小作品を中心としたグループ展 「islands」を開催します。互いに近い距離にありながらそれぞれ独自の文化を持つ群島のように、東アジアという同じベースを持ちながらも各自の世界観を展開するアーティストたちの作品を展示します。 世界がコロナ禍に見舞われて1年が経とうとしています。大規模イベントの中止や縮小が相次ぎ、たくさんの人と大きな声で語らい笑うことができなくなった一方、身の回りにある小さくも美しいもの、楽しいものがいかに心をときめかせてくれるか、そのことに改めて気付くことができた1年だったとも言えるでしょう。今展の作品ひとつひとつも大きくはありませんが、近寄って目を凝らすとそこにはたくさんの素敵な発見があります。いつもはペインティングを描く作家が引くドローイングの繊細な線、粘土で形作った小さな人形の表情のひとつひとつ、勢いよく描かれたスケッチの生き生きとした筆跡。一度に少人数でしか展示を観ることができない、言い換えれば少人数で展示を独占できる今だからこそ、じっくりと作品に向き合うことも叶います。海原に浮かぶ島々を回遊するように、作品を辿りながらギャラリー内をゆっくり回り、アーティストの個性あふれるたくさんの魅力を見つけていただける展覧会です。Read more -
Some of the Many Things That I Want to Remember
Tomoko Kashiki 2020年7月2日 - 8月15日 SingaporeOta Fine Arts Singapore is delighted to present 'Some of the Many Things That I Want to Remember', a solo exhibition by Japanese artist, Tomoko Kashiki. This exhibition marks Kashiki's...Read more -
Private Viewing Room
Chen Wei, Masanori Handa, Tsuyoshi Hisakado, Tomoko Kashiki, Yayoi Kusama, Hiraki Sawa, Nobuaki Takekawa 2020年4月11日 - 6月6日 ShanghaiDue to the novel Coronavirus (nCoV) situation, Ota Fine Arts Shanghai's private viewing room will feature works by Chen Wei, Masanori Handa, Tsuyoshi Hisakado, Tomoko Kashiki, Yayoi Kusama, Hiraki Sawa...Read more -
Post Art Fair
草間彌生、アイ・チョー・クリスティン、樫木知子、クリス・ヒュン・シンカン、竹川宣彰、半田真規、久門剛史 2020年4月1日 - 6月12日 Tokyoこのたびオオタファインアーツでは、東京とシンガポール両スペースにおいて、グループ展「Post Art Fair」を開催いたします。本年度のアートバーゼル香港は中止となりましたが、弊廊では所属作家の意欲に満ちた最新作を皆様にご紹介し、アジア全体がひとつとなってこの状況を乗り越えていけるよう前進していく所存です。近年注目を集めるインドネシアの作家アイ・チョー・クリスティンの新作をはじめ、香港の若手作家クリス・ヒュン・シンカンの日本初公開となるドローイングシリーズや、草間彌生、樫木知子、竹川宣彰などの新作ペインティングを発表いたします。Read more -
Tomoko Kashiki | Stories Told Tomorrow
Tomoko Kashiki 2019年11月7日 - 2020年1月4日 ShanghaiOta Fine Arts Shanghai is delighted to present 'Stories Told Tomorrow', a solo exhibition by Japanese artist, Tomoko Kashiki (Kyoto, 1982). The exhibition marks Kashiki's first solo presentation in China,...Read more -
Distance
Geraldine Kang, Tomoko Kashiki, Tang Dixin, Bo Wang 2017年4月15日 - 5月27日 SingaporeOta Fine Arts Singapore is delighted to present 'Distance', a group exhibition by 4 artists from Asia: Geraldine Kang (Singapore), Tomoko Kashiki (Japan), Tang Dixin (China) and Bo Wang (China/USA)....Read more -
Landscapes
Chen Wei, Chris Huen, Tomoko Kashiki, Hiraki Sawa 2017年1月10日 - 2月25日 SingaporeOta Fine Arts Singapore is delighted to present 'Landscapes', a group exhibition featuring 4 artists from East Asia: Chen Wei (China), Chris Huen (Hong Kong), Tomoko Kashiki (Japan) and Hiraki...Read more -
樫木知子
2016年9月24日 - 11月19日 Tokyoオオタファインアーツでは、金沢21世紀美術館での個展『アペルト05 樫木知子 ~Daydream~』にあわせ、近作による樫木知子展を開催いたします。 樫木の描く人物像は、部屋や庭といった密閉的な空間に配置され、人とにじみ出る存在感を絵画表面に閉じ込めています。作品は主にアクリルで描かれ、描いた画布の上をサンダーで削り、再び描くというプロセスを経て、滑らかな絵画表面と幾重にも重なる色層の背景を獲得しており、一見日本画と見まがうような平滑なテクスチュアと流麗な描線から生み出されるスタイルが見受けられます。 本展でもそのスタイルは一貫して変わりませんが、怖さと美しさが表裏一体となった独特の世界観はさらに深められています。作家の近年の作品は、様々なテクスチャーの折り重なりの中で、色彩がより力強く鮮やかになってきています。さらに、その絵画空間にはおぼろげな「ねじれ」が存在しているために、そうした力強さは一方向的にではなく、拡散的に伝達します。また、彼女が「自分の周りのすべてを作り上げることに専心するあまり自分の体が文字通り溶けてしまう」あるいは「風景の中へ蒸発する」と言及するように、作品の多くには人物が描かれていながら、人物と環境の境界は物質的にどこか曖昧で、透明です。そのため彼女がしばしば作品内に表現する「風」とともに、多くの匿名の記憶と風景が、そのような幽霊的な身体を通り抜けていく感覚を鑑賞者は受けることになります。そのとき、わたしたちの記憶でさえも、彼女の作品に共通して見られる執拗な「襞」のように、作品内へと織り込まれていくのかもしれません。そうした鑑賞体験のなかで、私たち自身のアイデンティティも溶け出して、作家の表現する世界、そして作家自身のアイデンティティと混ざり合い、一体化するのです。 その結果として、樫木の作品はさながら白昼夢のように鮮烈な印象を残す絵画となります。そこには、思い出せない遠い過去の記憶、あるいはまだ見ぬ未来が示されているのでしょうか。「私の作品は特別な意図を前提にしているわけではありませんから、解釈の彼方で年齢や性別や国籍を超え、限りなく多くの人を魅了することができればと思っています」と樫木が言うように、彼女の作品はそれぞれの出自に左右されることなく、溶け出すような白昼夢へと鑑賞者を誘うでしょう。作家の豊かな想像力による、軽やかで同時に濃密な絵画を本展で是非ご高覧ください。 樫木知子は、1982年京都生まれ。京都市立芸術大学美術研究科の修士号、博士号の両方を取得し卒業。 過去にGalerie Nathalie Obadia での個展(パリ、2015年)、『高橋コレクション展:ミラー・ニューロン』(東京、2015年)、『the 7th Asia Pacific Triennale of Contemporary Art』(ブリスベン、2012年)、『ヨコハマトリエンナーレ』(横浜、2011年)、『Bye Bye Kitty!!!』(Japan Society Gallery、ニューヨーク、2011年)などに展示されています。さらに、the Museum of Old and New Art(タスマニア、オーストラリア)、Queensland Art Gallery/Gallery of...Read more -
はじまりの線
2016年1月26日 - 2月20日 Tokyoオオタファインアーツでは、国内初出展作品や新作を含めたドローイング展「primal lines / はじまりの線」を開催いたします。本展では、インク、エッチング、水彩、鉛筆など、作家それぞれに異なる素材を用いて描かれた、創作の出発点ともいえる作品を展示いたします。本来であれば巡りあうことは少ない個別の表現が、「ドローイング」という共通した軸を持つことによって、より新鮮な視座を展示空間に切り開くことでしょう。ぜひこの機会に、作家の表現の源泉であるドローイングの数々をご高覧ください。Read more -
Tomoko Kashiki
Tomoko Kashiki 2014年1月17日 - 3月2日 SingaporeTo inaugurate our new space at Gillman Barracks, Ota Fine Arts presents a solo exhibition by Tomoko Kashiki, the artist's debut in Singapore. Reminiscent of Heian Buddhist paintings and bijinga,...Read more -
Vivid Strata: New Representations of Asia
Firoz Mahmud, Rina Banerjee, Takao Minami, and Tomoko Kashiki 2013年6月21日 - 7月21日 SingaporeThis summer, Ota Fine Arts is delighted to present a group exhibition featuring four contemporary artists from Asia all working in various strands of figurative representation, by means of painting,...Read more -
常設展
樫木知子、草間彌生、さわひらき、ジェシカ・ダイアモンド、竹川宣彰、デール・バーニング、半田真規 2013年2月9日 - 3月9日 Tokyo -
垂直
D・ウーリントヤ、樫木知子、草間彌生、ジャン・ワン、竹川宣彰、小林武志、グオ・イーチェン 2012年3月21日 - 4月6日 Tokyoモンゴルの作家であるウーリントヤの作品を見るとき、日本の我々は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を連想するのではないでしょうか。 蜘蛛の糸は『カラマーゾフの兄弟』に出てくるロシア民話、あるいは仏教説話から着想を得ているとも言われますが、いずれも天国と地獄という宗教的な垂直性の小説空間を持っています。 民話と説話が酷似していることに驚かざるをえません。 小林武志は古式の生け花を立てられる数少ない作家です。 日本では古くから巨木や石を円環状に配置したり倒立させたりする呪術的な風習は縄文期の遺跡に見られます。すでに平安期の文物には「石を立てる」、「石を据える」という表現がなされ、「立てる」は神への意識、「据える」は人の住むところへの感覚を表しているといわれます。 この神と生活を媒介する装置として生まれたのが「たてはな」あるいは「立花」と呼ばれる形式のいけばなであったことは納得のいくところです。 「たてはな」は中世に生まれた様式といわれますが、それ以前の奈良時代に仏への供花は行われていました。 立花が成立する平安末期には、木を立てるという自然信仰が仏への花と習合されて「たてはな」が成立したようです。 一方、現在でも大陸中国の庭には「太湖石」と呼ばれる立てられた奇石を見ることができます。「太湖石」は江蘇省の太湖に沈んでいた石灰岩が長年の浸食により穴が開いて複雑な形になったものです。 この自然の偶然性を当時の有力者は珍重したのです。 皇帝徽宗はじめ有力者は、この奇石のなかにいくつもの宇宙の存在を認め、詩を読み、瞑想し、別世界に遊んだといわれます。 別世界とは「洞天」とも呼ばれ、神仙の住処であり、これが山水の起源となるところです。雪舟はそれを理解していましたが、結果、山水画の形式のみが輸入されたのは残念なことです。今日でも中国作家が執拗に山水画を描くのは、文化大革命で悲劇的に分断された歴史と思想の連続性を獲得しようと試みる営為なのです。 山水のオリジンともいえるこの「太湖石」の宇宙観を現代に蘇らせようとするのが北京在住のジャン・ワンの彫刻です。 今回ご覧いただくのは、上記に述べた宗教的な垂直性だけではなく、蝉の孵化を人の歴史観と重ね合わせる時間軸を描く竹川宣彰の作品、 抽象表現における精神性が豊かに表現された草間彌生の初期ドローイングや、ディストーション空間を描く樫木知子、風船にカメラを付けて都市を俯瞰する映像作品のグオ・イーチェンも含まれます。Read more -
樫木 知子
2011年11月26日 - 2012年1月21日 Tokyoオオタファインアーツでは、11月26日より、弊廊で2回目の開催となる樫木知子の個展を開催いたします。樫木は、今春京都市立芸術大学博士課程を修了し、京都市内に新たにアトリエを設けさらに制作に没頭した日々を送っています。 一見日本画と見まがうような平滑なテクスチュアと流麗な描線から生み出されるスタイルは一貫して変わりませんが、怖さと美しさが表裏一体となった独特の世界観をさらに発展させています。樫木の描く人物像は、時に断片化し、部屋、あるいは庭といった、限られた空間に配置され、人とにじみ出る存在感を絵画表面に閉じ込めています。 作品は全てアクリルで描かれ、描いた画布の上をサンダーで削り、再び描くというプロセスを経て、滑らかな絵画表面と幾重にも重なる色層の背景を獲得しており、近世絵画や平安仏画、さらに松園や栖鳳の美人画をも彷彿とさせる画風は、京都に生まれ学んだことによるのかもしれません。 子供の頃から、他者に、自分の思っていることをちゃんと伝えられない感覚を持っていたという作家は、伝えられないものの一例である「頭の中にあるもの」を絵画で表現しています。「絵の始まりは自分のイメージで、ゴールはそれにどれだけ近づくかということ」と作家が言うように、蓄積した光景をつむぎ、発酵させ、ゴールに近づくために描いては消し、進行中の画面とゴールを照らしあわせ、印象を調整するモチィーフや表情を幾度も加減することで、折り重なるレイヤーを持つ絵画を形作ります。フラットに磨かれた画面は、時間や手の痕跡を消すことを志向して作られますが、それは、描かれたものはそもそも物語を持つものではなく、ただ頭の中にあるものであって、そこに時間は存在しないと考えるからです。 日常の光景は、ゴールに近づくにつれ変貌をとげ、さながら白昼夢のように鮮烈な印象を残す絵画となります。思い出せない遠い過去の記憶、あるいはまだ見ぬ未来を示すのか、作家の豊かな想像力による、軽やかで同時に濃密な絵画をお楽しみください。 樫木は、本年ニューヨーク、Japan Societyで開催された「BYE BYE KITTY!!!」展(デビット・エリオット企画)やヨコハマトリエンナーレに出展し、国際的に活躍の場を広げています。本展では新作を含む5点の作品を展示いたします。Read more -
8月の肖像
ロデル・タパヤ、草間彌生、ヘリ・ドノ、樫木知子、藤木倫史郎、小池真奈美 2011年8月2日 - 8月27日 Tokyo -
かちどき 2
猪瀬直哉、小沢剛、樫木知子、草間彌生、竹川宣彰 2010年1月29日 - 3月6日 Tokyo -
樫木知子
樫木知子 2009年3月13日 - 4月17日 Tokyo樫木の描く人物像は、時に断片化し、部屋、あるいは庭といった、限られた空間に配置され、人とにじみ出る存在感を絵画表面に閉じ込めています。平滑なテクスチュアと流麗な描線は、一見日本画と見まがうほどですが、作品は全てアクリルで描かれ描いた画布の上をサンダーで削り、再び描くというプロセスを経て、滑らかな絵画表面と幾重にも重なる色層の背景を獲得しています。近世絵画や平安仏画、さらに松園や栖鳳の美人画をも彷彿とさせる画風は、京都に生まれ学んだことによるのかもしれません。 子供の頃から、他者に、自分の思っていることをちゃんと伝えられない感覚を持っていたという作家は、伝えられないものの一例である「頭の中にあるもの」を絵画で表現しています。 今回の出品作11点のうち、≪影あそび≫、≪大浴場≫はいずれも本年度制作の最新作ですが、≪影あそび≫は、樫木曰く「きゃっきゃっ、くすくす、みたいな二人の状況」を描くべく、影絵あそび、あやとり、あるいはただ人が顔を近づけているだけといった様々な行為から、影絵あそびを選択し、また、どうすれば二人の人がいい具合に接触するのかを考えて、鳥でもカタツムリでもなくウサギの影絵で遊ぶ二人を描くことになったと言います。樫木の理想とする指の形がすでに頭の中にあり、その上で実際に影絵あそびを取材しながら現在の形となりました。実際の影絵のウサギの形をスタートとしながらも、ゴールとして樫木の頭の中にある指の形は現実ではありえない形であったため、ねじれた指先の二人が描かれました。≪大浴場≫では、テレビでふと目にした古い木造家屋に触発され、その木造家屋の中に、樫木の頭の中に既にあった光景、床下収納と人、が組み合わされました。画面手前の暗い室内と、対照的に明るい窓の外の風景、そして窓から吹き込むうねりを伴う風を描きたいと決まったところで、出発点となった木造家屋はコンクリートの室内へと変化し、さらにコンクリートの冷たさを緩和するために、椅子やテーブルの木製の脚とダサい靴下を描き加えたようです。 「絵の始まりは自分のイメージで、ゴールはそれにどれだけ近づくかということ」と作家が言うように、蓄積した光景をつむぎ、発酵させ、ゴールに近づくために描いては消し、進行中の画面とゴールを照らしあわせ、印象を調整するモチィーフや表情を幾度も加減することで、折り重なるレイヤーを持つ絵画を形作ります。フラットに磨かれた画面は、時間や手の痕跡を消すことを志向して作られますが、それは、描かれたものはそもそも物語を持つものではなく、ただ頭の中にあるものであって、そこに時間は存在しないと考えるからです。日常の光景は、ゴールに近づくにつれ変貌をとげ、さながら白昼夢のように鮮烈な印象を残す絵画となります。思い出せない遠い過去の記憶、あるいはまだ見ぬ未来を示すのか、作家の豊かな想像力による、軽やかで同時に濃密な絵画をお楽しみください。Read more -
携帯電話の電源を切ったとき、絵画は雄弁に語りだす。
小池真奈美、樫木知子、フィロズ・マハムド 2008年6月7日 - 7月12日 Tokyoオオタファインアーツでは、小沢剛と弊廊鶴田依子の共同企画として、若手作家3名によるグループ展を開催いたします。 両者が魅力を感じる作家を持ち寄ったところ、奇しくも絵画表現を主とする作家が集まったことから、表題の通りの絵画展を開催することとなりました。出品作家3名はいずれもこの春から大学院博士課程に籍を置く若い作家達です。3作家の作品には一見統一性は認められませんが、期せずして共通する平面表現の手法や、主題および対象物の選択などに西欧近代から遠く離れようとする意思を感じます。 言い換えれば共通項としてアジアのリアリティや想像力を持ち併せていると言えるのかもしれません。 小池真奈美は、落語をベースに油画の制作を行っており、中でも「粗忽長屋」や「天狗裁き」といった幻想的な主題の落語を鮮烈な色彩をもって描いています。 市販の絵筆ではなく、スポンジを使った自作の筆で描かれた絵画は、油画でありながら独特の滲みを見せ、特異なフィクションの世界を見事に絵画化しています。 樫木知子の絵画は、日本画の白描を思わせる流麗な描写がジェッソとアクリルで描かれ、表面をサンダーで磨くことで平滑なテクスチュアを持ち、不思議な透明感をたたえています。しばしば描かれる女性像は、時に断片化し、背景の堆積する色層と混交しながら観る者を絵画表面からさらに奥へと誘います。 フィロズ・マハムドの作品に特徴的な緑の色彩は、彼の出自であるバングラデシュの国旗の色でもあります。 その緑で、神話化されもする特権階級の人々の肖像を、バングラデシュの田舎で市井の人が伝統的に使うステンシル技法で描く事で、母国の社会環境、階層と制限の存在とそれに対するラブアンドヘイトを私達に伝えてくれます。Read more
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樫木知子
「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき」金沢21世紀美術館、石川 2023年3月22日樫木 知子 は2023年4月8日から10月5日まで金沢21世紀美術館 にてグループ展「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき」に参加いたします。 展覧会名:「コレクション展1 それ...Read more -
樫木知子
「ASIA PACIFIC CONTEMPORARY: THREE DECADES OF APT Queensland Art Gallery | Gallery of Modern Art Touring Exhibition」 Dogwood Crossing MILES、オーストラリア 2022年7月16日樫木知子は2022年7月9日から8月20日までオーストラリアにあるDogwood Crossing MILESにて、グループ展「ASIA PACIFIC CONTEMPORARY: THREE DEC...Read more -
アートバーゼル香港2022
ブース: 1D18 2022年5月19日オオタファインアーツは2022年5月24日から30日まで香港で行われる「Art Basel Hong Kong 2022」に参加いたします。弊廊はブースナンバー 1D18にて草間...Read more -
「WEST BUND ART & DESIGN 2020」11月11日(水)-15日(日) ブース:A101
2020年10月30日オオタファインアーツは11月11日から15日まで上海で行われる「WEST BUND ART & DESIGN 2020」に参加いたします。弊廊はブースナンバーA101にてアイ・チョー・クリステ...Read more