ジャオ・ヤオ: まあ普通、でも・・・

Overview

オープニングパーティ(作家在廊):

10月18日 [土] 17:00より

オオタファインアーツ (ピラミデビル) にて

オオタファインアーツでは、ジャオ・ヤオ(趙要・1981年中国生まれ)の日本初個展『まあ普通、でも・・・』を開催します。ジャオは中国で「80後(バーリンホウ)」と呼ばれる世代を代表するコンセプチュアル・アーティストで、その作品は絵画、インスタレーション、写真、ビデオ、パフォーマンスなど多岐にわたります。一貫した厳格さを持つコンセプチュアルな制作手法がキュレーターらの目に留まり、「タイランド・ビエンナーレ2025」やアメリカの歴史ある現代美術ビエンナーレに参加することも決定しました。今展では、ピラミデビルのオオタファインアーツでペインティングを、国立新美術館そばの7CHOMEで石を用いたインスタレーションを展示します。

 

ジャオの創作活動は、日常の経験と芸術上の経験との架け橋を築くこと、あるいは両方の経験を結集して作品を生み出すことに主眼を置いています。観客は見るもの・感じるもの・触れるもの・聴くものを日々の体験と重ね合わせながら、物質性・形・目の前のあらゆるものの意味を探ること、そのために知覚を複雑に駆使することを迫られます。

 

ピラミデビルでは、2011年から継続して制作している《A Painting of Thought(考えのある絵)》シリーズから5点を展示します。これらのペインティングの構図は、論理的思考を育むための頭の体操パズル、つまり既成のイメージから取ったものです。ジャオは、アクリル絵具を丹念に厚く塗り重ね、それを研磨して滑らかで艶のある表面に仕上げます。この作業は、綿密な工程表を基にイメージが完成するまで繰り返されます。絵具の下にあるのは、中国各地の織物市場や村々を巡る旅で見つけたありふれた生地ですが、その多くは村や地域独自の柄の入った織物を手縫いして作られたシーツです。

 

ジャオが扱う素材は、知覚とコンセプトの両面で重要な体験を生み出します。シーツのようなペインティング、プラスチックのおもちゃを思わせるツルツルのアクリル、パズルから引用した既製イメージ。それは、目にしたものと日常のあふれたものとが結び付く体験です。上海・フォースン財団で今年開催された個展『やがてそれは広がり、そして折りたたまれる』でジャオは、この作品をシーツを干すかのように竿にかけて展示しました。それは中国の団地でよく見られる光景を髣髴させるものとなりました。

 

寡黙で几帳面なジャオは、多くの時間を独りで過ごし、日々の思索を書き留めてそれを反芻します。彼の関心は、普通のこと、繰り返されること、ありふれたものの価値を引き出し、それらを高めることへと向かいます。7CHOMEでは、「Spirit Above All(精神は全てより高し)」という言葉をチベット文字で刻んだたくさんの石を箱に入れて展示します。チベットでは、加護を願ってマニ石に文字を刻ませることが一般的ですが、東京においても、積み上げられたこれらの石は強い霊気とエネルギーを放ちます。観客は石に触れ、箱から取り出し、カーペットの上にそれを置くことで、一見何の変哲もない石にも微妙な差異があることに気付かされます。執念とも言える規則正しさに貫かれたジャオ・ヤオの制作は、「普通」を出発点としながら私たちを深い思考へと導きます。その強い信念に崇高さを感じさせるジャオ・ヤオの世界観をぜひご高覧ください。