築100年を超える蔵を改装したギャラリー「ARTRO」と門跡寺院「曼殊院」、京都の異なるふたつのスペースで、チェン・ウェイ(陳維)の個展『余剰の蓮果』を開催します。展覧会の中心を成すのは、チェンが幾度も京都に足を運び、曼殊院を舞台に撮影した新作写真《Manshu-in》シリーズです。作品が実際制作された場所に身を置き、生み出されたその作品と向き合うことのできる本展は、目の前に広がる風景が、作家のフィルターを通してどのように作品に結実するかを体験できる特別な機会となります。両会場に2点ずつの新作のほか、初公開となる小サイズの写真作品、近年の写真シリーズ、LEDを使った立体作品、映像作品も展示します。
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中国の1980年代生まれの作家を代表するひとり、チェン・ウェイ(陳維)が、築100年を超える蔵を改装した現代美術ギャラリー「ARTRO」と門跡寺院「曼殊院」という京都の異なるふたつの会場で、個展『余剰の蓮果』を開催いたします。展覧会タイトルは、今年ハリウッドで映画化され話題となったホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場する「蓮の実」に着想を得ています。この古代ギリシャの物語において、蓮の実はそれを口にすると故郷への帰路すら忘れてしまう、記憶を奪うものとして描かれています。一方、「蓮」は仏教をはじめとする東洋文化においても特別な意味を持ちます。チェンは、異なる歴史や文化が交錯するなかで、記憶や知覚、そして現代や現実について考察しようと試みます。新作4点が両会場に2点ずつ展示されるほか、近年の写真シリーズ、LEDを使った立体作品、映像作品も紹介されます。
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曼殊院シリーズ
写真を主な表現手段とするチェンは、街で見た実際の光景をもとにスタジオでセットを組み、架空の情景を撮影することで、虚実がないまぜになった独自の世界観を生み出してきました。新作《Manshu-in》シリーズでは、継続的に訪れてきた曼殊院という開かれた寺院を制作の場に選びます。今回鑑賞の場ともなっているこの寺院には、歴史的な美術品を設えた部屋が多数あります。チェンはそれらの部屋にレモンや桃、葡萄を置いて撮影を行いました。京都にある重厚な文化を持つ場所に、瑞々しく新鮮な香りを放つ果実が置かれたその光景は、チェンが愛読する梶井基次郎の『檸檬』を彷彿させます。実際に制作が行われた場でその作品と向き合うことで、鑑賞者は目の前に広がる光景が、作家の知覚を通してどのように「虚」と「実」に結実するかを体験することができます。
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Photo: Takeru Koroda. Courtesy of Manshu-in Temple
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Hypnotic Rain と Light Me
雨音とともに窓ガラスをつたう雨粒が布のスクリーンに映し出される映像作品《Hypnotic Rain》は、インターネット空間に溢れるASMRの入眠用動画を参照して作られた作品です。いつまでも眺めていたくなる架空の雨の情景と心地よい雨音のループは、不眠の解消を求めながらインターネットの沼にはまり込む人々の逆説的な状況を反映しています。一方、ライトボックスに浮かび上がった写真のような作品《Light Me》は、しばらく見つめているとわずかにイメージが変化してゆくのがわかる映像インスタレーションです。スマートフォンやPCなどの画面をひとり眺める人物の映像と、少しずつ変化するそれを眺める鑑賞者。その間には瞑想にも似た時間が流れます。京都の地に展示されるふたつの映像作品が共通して問うのは、画面の中の世界と現実の世界とを行き来する現代の個人の孤独、生のあり方と言えます。
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画面の中でイメージが絶えず生成され、編集され、新たな解釈が加えられる現代では、記憶や知覚はアルゴリズムと絡み合い、現実は様々な画像処理を経て新たな形に変わり続けます。そのなかで行われる本展は、イメージの中に存在しつつも決してその中に収めきれない“体験”に立ち返ろうとする試みとも言えます。異なるメディアの作品が互いに呼応し、歴史、文化、自然とも融合する特別な展覧会を、紅葉の季節を迎える京都でぜひご高覧ください。
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その他展示作品
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チェン・ウェイ(陳維)
1980年中国浙江省生まれ、現在は北京と東京を拠点に活動。主な個展に「Rehearsal in the Mist」G Museum (南京・2026)、「I Am the People」White Rabbit Gallery(シドニー ・2023)、「Make Me Illusory」West Bund Museum(上海・2021)、「Where Are You Going Tonight」chi K11 art space(広州・2018)、「Noon Club」JNBY Foundation(杭州・2015)。主なグループ展に「目 China. A new generation of artists」ポンピドゥー・センター(パリ・2024)、「TOPコレクション 見ることの重奏」東京都写真美術館(東京・2024)、「Collection Exhibition: Scales」金沢21世紀美術館(石川・2020)、「第12回光州ビエンナーレ – Imagined Borders」アジア文化センター(光州・2018)。主な収蔵先に東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、K11 Art Foundation(香港)、M+ Sigg Collection(香港)、ポンピドゥー・センター(フランス)、San Francisco Museum of Modern Art (サンフランシスコ)、Singapore Art Museum (シンガポール)、UBS Collection(スイス)など。
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会場
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