Biography

タン・ディシンは上海を拠点に活動する現代美術家で、主に絵画とパフォーマンスを通じて表現しています。彼は「80後」と呼ばれる1980年代生まれの作家の一人であり、中国社会や美術界の制度の中で抑圧される「身体」というテーマを深く掘り下げています。

彼のパフォーマンスは他者との関係性を模索しながらも、しばしば過激な行為を伴います。2010年の代表作《Act of God(不可抗力)》では、上海万博開催中に地下鉄の線路に飛び込み、電車が自らの身体をすり抜ける様子を映像として記録。社会における身体の存在と監視、表現の限界について鋭い問題提起を行い、激しい議論を呼びました。こうした作品は、中国の監視社会のみならず、美術界の構造や急速なグローバリゼーションがもたらす世界的な問題とも深く結びついています。

一方で、彼の絵画はより内省的で静謐な世界を描きます。西洋美術の正統的教育を背景に、タンは絵画を通じて自らの現実や感情を整理し、複雑な内面を純粋な形態や色彩で表現します。彼自身が「自分の身体が忘れてしまった部分を求めている」と語るように、その作品には限界を受け入れつつも精神的な自由と解放を求める「非力な身体」が描かれています。

2023年にはOta Fine Arts Shanghaiにて10点の新作を発表。大判のキャンバスに密集した群衆や身体の緊張感を描き、彼の作品に特有の身体表現の強度を改めて示しました。彼の絵画とパフォーマンスは、「身体」というテーマを軸に互いに補完し合い、個人の内面と外部世界、自己と他者のあいだに横たわる複雑な関係性を映し出しています。

 


略歴
1982年 中国・杭州生まれ
2005年 上海師範大学美術学院卒業
上海を拠点に活動


主な個展
「タン・ディシン」オオタファインアーツ上海(2023年)
「タン・ディシン」AIKE、上海(2021年)
「タン・ディシン」オオタファインアーツ東京(2018年)
「タン・ディシン」AIKE、上海(2017年)
「Tang Dixin: Dog Bark」オオタファインアーツシンガポール(2015年)
「Mr. Hungry」AIKE-DELLARCO、上海(2014年)

 

主なグループ展
「Fragment」オオタファインアーツ東京(2025年)
「The Hong Kong Jockey Club Series: Picasso for Asia—A Conversation」M+、香港(2025年)
「Pictures of the Post - 80s Generation -- Generational Leap」TANK、上海(2024年)
「Pixel Row Vol. 2」West Bund Museum、上海(2023年)
「On Behalf Of」Qiao Space、上海(2021年)
「横浜トリエンナーレ – AFTERGLOW」横浜(2020年)
「The Force Temple」TANK、上海(2019年)
「Two Houses: Politics and Histories in the Contemporary Art Collections of John Chia and Yeap Lam Yang」ICA、シンガポール(2018年)
「Absolute Collection Guideline」四方美術館、南京(2015年)
「第10回光州ビエンナーレ – Burning Down the House」光州(2014年)
「Revel – Celebrating MoCA’s 8 Years in Shanghai」上海現代美術館(2013年)
「ON | OFF China’s Young Artists in Concept and Practice」ユーレンス現代美術館、北京(2013年)


主な収蔵先
Points Center for Contemporary Art、ロンドン
G Museum、南京
TANK Shanghai、上海
四方美術館、南京
復星基金会、上海
M+、香港
新世紀芸術基金会、北京
Troy House Art Foundation、ロンドン

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