Biography

マリア・ファーラは1988年にフィリピンでイギリス人の父親とフィリピン人の母親とのあいだに生まれました。幼少期を日本の下関市で過ごしたあと、15歳より移り住んだロンドンで現在も制作活動を行っています。

ファーラが描くのは、日常でふと目にした場面や記憶の断片から構築される新たな情景です。通りのパン屋を覗く女性、窓越しの庭、鏡台に散らばる化粧品―。切り取られた一瞬は具体的でありながら、とらえどころのない浮遊感と広がりを感じさせます。使われている彩度の高い油絵具は、支持体のリネン生地の暗色地に置かれることで、より深く強い色調になります。人物の太い輪郭線、書道的な筆の払い、かすれ・にじみ、それらとコントラストをなす繊細な細部描写。多彩な筆使いが混在することで、画面にリズムをもたらしています。そうして浮かび上がる愛らしいモティーフは、それぞれの場所で存在感を放ち、ファーラの作品を特徴づけています。ファーラは、画面のクローズアップや、余白の扱いや筆法に日本的な趣を指摘されてきました。彼女自身、「技法、色、主題において『東』における伝統(書道、マンガ)に『西』由来の新たな道筋(生リネン、大判の油彩画)を掛け合わせる(もの)」と語っていますが、その言葉からは日本で培った視点と感性に自覚的であることが覗えます。

マリア・ファーラは、1988年フィリピン生まれ。2歳から15歳までを下関で過ごす。2016年、ロンドン大学スレード美術学校にて修士課程を修了。主な個展に「Too late to turn back now」オオタファインアーツ、東京/シンガポール(2019)、「Eaves Deep」mother's tankstation、ロンドン(2018)、「straits」mother's tankstation、ダブリン(2017)、「Marine」、Supplement Gallery、ロンドン(2016)、グループ展に「Hypnagogia」、Pippy Houldsworth Gallery、ロンドン(2018)、「Known Unknowns」、Saatchi Gallery、ロンドン(2018)等。主な所蔵先にSaatchi Gallery Collection(ロンドン)、AmC Collezione Coppola(ベニス)。

 
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