チェン・ウェイ

チェン・ウェイは、北京を拠点に活動するアーティストで、写真を主たるメディウムとしながら、彫刻、インスタレーション、映像など多様な表現方法を用いて、現代中国における都市と個人の関係性を詩的かつ批評的に探求してきました。2006年より作家活動を本格化し、中国のいわゆる「80後」世代（1980年代以降生まれ）の代表的なアーティストとして国際的にも注目を集めています。

キャリア初期には、安部公房やフランツ・カフカといった文学から着想を得た寓話的かつ演劇的な写真作品を発表。自らのスタジオ内で構築したミニチュアやオブジェを撮影することで、現実と非現実が交錯する独自のヴィジュアル言語を築き上げました。2010年代以降は、急速に変貌する中国社会のナイトライフや若者文化、都市空間を主題にしたシリーズへと展開し、光や建築、記号的なモチーフを通じて集合的な記憶やノスタルジアを繊細に描き出しています。

近年では、都市部にあふれるLED掲示板に着目した光の立体作品を展開。誰にも顧みられず街角に存在するこうした媒体に、詩的なフレーズや抽象的なカラーコードをプログラムし、メディア環境と情動の接点を浮かび上がらせています。点滅する光と消失する言葉のインスタレーションは、商業主義が支配する都市空間における無意識の感情、そして個々の記憶や希望の儚さを可視化します。

チェン・ウェイの作品は、写真表現の拡張や都市イメージの再解釈といった、国際的なヴィジュアル・カルチャーの動向とも呼応しています。Fotografiska Shanghai（2024）での個展や、ルイ・ヴィトンと中国郵政博物館のコラボレーションプロジェクト（2024）などを通じて、新たな写真と展示の可能性を提示しています。

略歴
1980年 中国浙江省生まれ
北京在住

主な個展
2025年「The Invisible Road」オオタファインアーツ（上海、中国）
2024年「Sweet Dreams」フォトグラフィスカ上海（中国）
2022年「Jamais Vu」オオタファインアーツ（シンガポール）
2021年「Make Me Illusory」（Centre Pompidou x West Bund Museum Project）ウエストバンド美術館（上海、中国）
2018年「WHERE ARE YOU GOING TONIGHT」chi K11 アートスペース（広東省、中国）
2017年「The Club」現代写真センター（メルボルン、オーストラリア）
2015年「Night Paris」オオタファインアーツ（東京）
2015年「Chen Wei: In the Waves」Chi K11 アートミュージアム（上海、中国）
2014年「Chen Wei: The Stars in the Night Sky are Innumerable」オーストラリア中国アート財団（シドニー、オーストラリア）
2011年「漠然の索」ヨコハマ創造都市センター（横浜、神奈川県）

主なグループ展
2025年「TOP 30周年記念 TOPコレクション：transphysical」東京都写真美術館（東京）
2025年「M+ Sigg Collection: Inner Worlds」M+（香港）
2024年「目 Chine | A New Generation of Artists」ポンピドゥー・センター（パリ、フランス）
2022年「ON | OFF 2021: Carousel of Progress」He Art Museum（上海、中国）
2016年「Chinese Whispers: Recent Art from the Sigg & M+ Sigg Collections」ベルン美術館（ベルン、スイス）
2015年「China 8: Works in Progress – Photography in China 2015」フォルクヴァング美術館（エッセン、ドイツ）

主な所蔵先
M+ Sigg コレクション（香港）
金沢21世紀美術館（石川）
K11アートファウンデーション（香港）
サンフランシスコ近代美術館（アメリカ）
シンガポール・アート・ミュージアム
東京都写真美術館
ホワイトラビット・コンテンポラリー・チャイニーズ・アート・コレクション（オーストラリア）
ポンピドゥー・センター（フランス）
UBSアートコレクション（スイス）